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おとなとこどもの自分づくり〜対話と共感子育て〜
(加藤繁美先生の講演会を聞いて)

2004年11月11日 甲府にあるつくし保育園の育児講座という講演会で山
梨大学の加藤繁美先生の『 おとなとこどもの自分づくり〜対話と共感子育て〜』
という題名で講演を聞いてきました。

現在、2歳児以下のこどもで22時以降に寝るこどもが全体の4割にもなるとい
います。この年代にあるべきこどもの姿と心のあり方、時間の流れが親(おと
な)のそれとあわず、本来ならば子育てを楽しいと思いところを、生活も目の前
もしんどいと思うおとなも多くあります。どうして、そんなむずかしい時代となった
のでしょう。
1960年前までは、こどもを育てる上で特別な知識は必要ありませんでした。親
は親の時間で精一杯でした。しかし、親を支え、こどもを支えていく社会がありま
した。こどもは地域・家族・学校の中でこどもがあるべきこどもの姿に成長してい
きました。(地域とは、この場合おとなの関わらないこどもだけの社会で、色々な
年齢がいたものです)
1960年から1975年地域社会がなくなってきて一つの子育ての社会が失われ
てきました。まだ学校と家族がキチンと機能して地域社会で足りないものをなん
とか支えてきましたが、この頃から集団を苦手とするこどもがはじかれてしまうよ
うになってきました。
1975年以降、家族が家族としての役割を果たすことがむずかしくなってきまし
た。学力が重視され、家族が家族としての役割でなく学校の役割をするようにな
ってきました。普通に家族と生きるということ、普通に仲間と生きるということが
どういう事かイメージしずらくなってきました。そんな中、子育ての楽しさとつらさ
のバランスが微妙になってきました。

この難しい時代にこどもをこどもらしく育てていくのには、三つの社会が1960年
以前の形に戻っていくのが良いのです。
では、どうしたら家族の役割を取り戻せるのでしょうか?

それは、こどもの成長の様子と合わせて考えていくとわかりやすいです。
こどもは生まれてから2ヶ月間を新生児と呼ばれます。その後、2ヶ月から6ヶ月
の愛だを乳児前期と呼ばれています。この乳児前期から、こどもはモノと対話す
る能力と人と対話する能力を身につけていきます。
モノと対話する能力は、目で見たものに対して興味を持ち、手を伸ばして触ろう
としたりすることや、ソレに対して自分から探索するようになります。モノとの会
話はこども自身の中に生まれながら持つ力であり、目が見える限り積極的能動
的に獲得していく力です。
人と対話する力は、まずは受動的情動要求から現れます。
おしっこをした→おむつが汚れて気持ちが悪い→気持ちが悪いから泣く
→おとながおむつを替えてくれる→気持ちがよくなる
という繰り返しの中で、こどもは「なんだかおしっこをして気持ちが悪い時に泣く
と、大抵同じ人(親)が来て気持ちよくしてくれる」という事を知っていきます。しか
も、その人(親)は、よく身体をマッサージしてくれたりして一緒にいると気持ちが
良いし嬉しい・・・とい感覚を覚えていきます。
その繰り返しの中で、今度はこどもはオムツが汚れて気持ちが悪いから綺麗に
して欲しいという要求を込めて泣くようになってきます。これを能動的情動要求と
呼びます。もちろん、この要求はオムツを交換することだけでなく生活の色々な
場面で見られます。そして大事な事として、この要求は発達していくのです。(生
活に関ったことだけでなく)おとなは、こどもの要求を受けとめ、キチンと返す関
りを繰り返し、こどもはおとなに対して“基本的信頼感”(他の人でない親の存在
を心地よく思える)を待つことができます。この、基本的信頼感は、今後のこども
の成長の上でとても大切になります。10ヶ月以降くらいからは、信頼するおとな
がいるからこそ、そのおとながすることに同調して模倣する同調要求の時期とな
るのです。
人と対話する能力は、こども自身がおとなを求めてきた時に、意識的にこどもが
人とかかわれるように、積極的に関っていくのが親の役目になり、そいうしない
と育たない力でもあります。

この二つの能力をもとにして、こどもの世界は広がっていきます。

こどもが成長していく中で、家族ができる役割は、こどもが外の世界へ心と身体
を向けられるように、人と関るための力を持つために、基本的な信頼感を親とこ
どもの間で作られるように、3歳までに積極的に意識して関っていくのが大切だ
との事です。

では、3歳以上のこどもは、もう親との基本的信頼をもつことができないのでしょ
うか?加藤先生は「こどもはつよい!」と言い、話を続けました。一番簡単な方
法は、絵本を1日2冊〜3冊、こどもに読んであげるのが良いそうです。絵本を
通して、親の方がこどもと物語を共感し対話する能力が少しづつ育っていき、こ
どもの話をキチンときけるようになるのです。こどもは、ソレまでに親との関る力
が出来上がっていなくとも、親の側が話しを聞いてくれるようになると、話してく
れるようになるから「こどもはつよい!」のです。
対話上手になるには、こどもが“もうちょっとしゃべりたい”と思えるように聞き上
手になると良いとの事です。必要以上に話すぎるのではなく、絵本を読み終わっ
た後などは、こどものつぶやきに相槌をうつくらいが丁度良いそうです。

共感とは、親が一方的にこどもに共感するだけでなく、こどもが親に、こどもがこ
ども同志で共感することもあります。こどもが他者との関りを持ち共感していけ
る生きる力を身につけるためにも、親とこどもの基本的信頼感をキチンと作らな
いといけないという事でした。


加藤先生の話を聞くのは何回目かだったのですが、加藤先生の独特の話し方
のためもあり毎回ぐーっと話に引き込まれていきます。そして「あー!なるほ
ど!!」と思えることが、とても多くあり子育ての中で、とてもタメになります。
是非、機会があったら、お聞きになることをお薦めしたい先生です!


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